アクアリウムではシクリッドのように弱アルカリ性の水質を好む熱帯魚もいますが、弱酸性の軟水が熱帯魚や水草を飼育・育成に適した場合が多いです。
熱帯魚の棲息流域の環境が軟水であったり、軟水化によりpHを下げ易くなりCO2の溶解や栄養素の吸収改善に関係しています。
硬水・軟水とは
水にはカルシウムとマグネシウムが含まれています。
水1リットル当たりに含まれているカルシウムとマグネシウムの量(これを硬度と言います)により硬水か軟水に区別しています。
以下がWHOと日本の基準になります。
WHO(世界保健機関)の基準
軟水 | 0~60mg/L未満 |
中程度の軟水 | 60~120mg/L未満 |
硬水 | 120~180mg/L未満 |
非常な硬水 | 180mg/L以上 |
日本の基準
軟水 | 0~100mg/L |
中硬水 | 101~300mg/L |
硬水 | 301mg/L以上 |
数値は覚えなくても良いと思いますが、硬度の値を測定する場合に参考にしてもらえればと思います。
軟水化の方法
飼育に適した軟水にするには以下のような方法があります。
浄水器で軟水化

浄水器にはカチオンフィルターと呼ばれる軟水化専用のフィルターがあります。
陽イオン交換樹脂が入っていて、カルシウムやマグネシウムを吸着し代わりにナトリウムを放出します。
初期費用やフィルター交換に費用がかかります。
ろ材で軟水化

リバースグレインソフト(ウォーターエンジニアリング社)と言うろ材はGHを1前後にするだけでなく、pHも弱酸性化、KHも1前後にそしてアンモニアの吸着と素晴らしい効果が記載されています。
このろ材もイオン交換樹脂が含まれているようです。
因みに、ウォーターエンジニアリング社は他に、酸化物を除去するリバースリキッドフレッシュという製品もあります。
フィルター内で軟水化

陽イオン交換樹脂を非常に目の細かい袋の通水性のあるものに入れ、上部フィルターや外部フィルターに入れる。
フィルター内のろ過でカルシウムやマグネシウムを除去。
≪イオン交換樹脂とは≫
水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンを吸着し替わりに樹脂のイオンを放出するもの。
基本的にはイオン価数、原子番号の大きい順で優先的にイオン交換される。
優先順位の高いイオンから交換されるので、場合によってはカリウムイオンも交換します…。
黄色の小さい粒で滑りやすいので、こぼすと大変なことになる。
再生利用可能(濃いイオン濃度にすることでイオン交換の優先順を崩せるらしい)。
カルシウムイオンやマグネシウムイオンの吸着限界が分からないため、メーカー推奨の期間で買い換えや再生が必要。
≪Na型陽イオン交換樹脂≫
水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを吸着し代わりにナトリウムイオンを放出する。
再生利用可能で10%の塩水をゆっくりイオン交換樹脂にとおす。
≪H型陽イオン交換樹脂+OH型陰イオン交換樹脂≫
H型陽イオン交換樹脂は水中のカルシウムイオンなどの陽イオンを吸着し水素イオン(H)を放出。
OH型陰イオン交換樹脂は陰イオンを吸着し水酸化物イオン(OH)を放出。
結果、HとOHから水(H2O)が生成される。
再生利用可能だが、塩酸や硫酸で行うようなので我々は再購入。

ゼオライトは?

アクアリウム用品として昔から販売されているゼオライト。
このゼオライトも陽イオンの吸着能力があります。
ただし軟水化の話となるとマグネシウムイオンの優先順位は最弱なので、水中に他の陽イオンがあると効果は薄くなります。
含まれるカルシウムやマグネシウムが溶け出してきて逆効果。
優先順位が高いイオンは、カリウムイオンやアンモニウムイオン。
カリウムの優先順位が高いので水草レイアウト水槽には向かない。
アンモニウムイオンを吸着するので、立ち上げ初期など水質が安定しない場合は一度使ってみても良いかも。
植物で軟水化

カルシウムやマグネシウムは三大栄養素に次ぐ栄養素です。
従って成長の早い有茎草や浮き草、水上植物に吸収してもらう方法。
水上植物は、上部フィルターや外掛けフィルターに植え込んだり、水槽の縁にフックを掛けてセットします。
最後に
硬度の高い地域に住んでいる方は、生体や水草に合わせてある程度軟水にする必要があります。また軟水にした方がpHや栄養吸収など飼育環境も容易になってきます。厄介者の黒髭苔ともおさらばできるかもしれません。硬度の高さを感じている方はいづれかの方法を試してみてはいかがでしょうか。
ただ注意点として、水草レイアウト水槽の場合は軟水化もほどほどにしないと葉が白化したりします。カルシウムやマグネシウムも栄養素の1つだからです。